ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
16. そして、……

座っててよかった。
でなきゃ、腰が抜けてひっくり返ってたかもしれない。

麻痺した頭で考えながら、カタカタ小刻みに揺れてしまう身体に腕を回して、抱きしめる。
その間もボロボロと零れ落ちる涙が頬を濡らしていて。

「っ……」
潤んだ視界が、彼の姿をあやふやにしてしまう。

あぁダメだ。
もっとちゃんと見たいのに……



「ふ、ぁははははははっ……!!」


けたたましい最上の笑い声が、夢見心地の私を現実に引き戻した。

「ヒーローのご登場か! 笑わせてくれる。状況をよく見るがいい」


血走った目が見ているのは――私?


カチャ


息が、一瞬できなくなる。
身体が……緊張で強張る。


こめかみに、固い感触が当たっていた。

恐る恐る目だけをキョロっと動かすと、すぐ脇に石塚が立っていて。
私に突き付けていた――黒光りする、拳銃を。

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