ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「めでたいことなんだ。そんな言葉、言わなくていい。妊婦の部下はお前が初めてじゃないし、心配するな。そういう時のために、俺がいるんだから」

ああほら、やっぱり。
私この人の部下でよかった――


「来月のセミナーは延期になったし、ちょうどよかったな」
「え? 延期、になったんですか?」

セミナーといえば、ライアンが講師を務める予定のアレよね。IT戦略セミナー……それが延期? 彼は何も言ってなかったけど。

「あぁ、講師のスケジュール都合だとさ。あいつもあからさまだな」

あからさま……?
どういうことだろう、と眉を寄せる私に、部長は肩をすくめてみせた。

「あれはもともと、別の奴が講師の予定だったんだ。そこへリーが強引に自分をねじ込んできた。お前のために」

「私の、ため……ですか」

「お前ら、少し前に別れる別れないって揉めてただろう。その時だ。お前に近づくチャンスを作ろうと無理やり講師になって、お前をセミナーに参加させろと俺に頭下げて頼んできたんだ」


――わざわざ部長経由で伝えてこなくても、直接オレに言えばすぐ譲ってやったのに。

そっか……そうだ、思い出した。
坂田に決まっていたセミナーの参加者を、部長が無理やり私にふったんだった。
まるで私たちをくっつけようとしてるみたいだって、疑ったことがあったっけ。
やっぱりあれは、ライアンから頼まれてたんだ。

「お前と元に戻った途端講師を降りるなんてな。おかげですぐには替わりが見つからなくて、延期だ」
「すっすみませんっ!」

かぁっと血の上った顔を伏せて、とにかく謝った。
ライアンってば、何勝手なことやってるのよ……

「“彼女を幸せにできるのは、僕だけですから”」

< 39 / 394 >

この作品をシェア

pagetop