ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「めでたいことなんだ。そんな言葉、言わなくていい。妊婦の部下はお前が初めてじゃないし、心配するな。そういう時のために、俺がいるんだから」
ああほら、やっぱり。
私この人の部下でよかった――
「来月のセミナーは延期になったし、ちょうどよかったな」
「え? 延期、になったんですか?」
セミナーといえば、ライアンが講師を務める予定のアレよね。IT戦略セミナー……それが延期? 彼は何も言ってなかったけど。
「あぁ、講師のスケジュール都合だとさ。あいつもあからさまだな」
あからさま……?
どういうことだろう、と眉を寄せる私に、部長は肩をすくめてみせた。
「あれはもともと、別の奴が講師の予定だったんだ。そこへリーが強引に自分をねじ込んできた。お前のために」
「私の、ため……ですか」
「お前ら、少し前に別れる別れないって揉めてただろう。その時だ。お前に近づくチャンスを作ろうと無理やり講師になって、お前をセミナーに参加させろと俺に頭下げて頼んできたんだ」
――わざわざ部長経由で伝えてこなくても、直接オレに言えばすぐ譲ってやったのに。
そっか……そうだ、思い出した。
坂田に決まっていたセミナーの参加者を、部長が無理やり私にふったんだった。
まるで私たちをくっつけようとしてるみたいだって、疑ったことがあったっけ。
やっぱりあれは、ライアンから頼まれてたんだ。
「お前と元に戻った途端講師を降りるなんてな。おかげですぐには替わりが見つからなくて、延期だ」
「すっすみませんっ!」
かぁっと血の上った顔を伏せて、とにかく謝った。
ライアンってば、何勝手なことやってるのよ……
「“彼女を幸せにできるのは、僕だけですから”」