ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「ほら、ここだ。入って」
到着した先は、六本木のシェルリーズホテル。
でも、案内されたのはホテルの裏側の低層棟で。
今年オープンしたばかりという、レジデンスエリアの一室だった。
ムーディなスポットライトに照らし出された大理石の玄関スペースを恐る恐る過ぎると、ベッドルームが見える。
豪奢な天蓋付きのベッド、金の装飾が施された猫足の家具たち……
ヨーロッパのお城のようなそこをチラリと覗き、先へ進む。
足を踏み入れたのは、リビングダイニングだった。
住宅展示場みたいなぴかぴかのキッチン、そして……吹き抜けの空間をたっぷり使ったシアター並みの巨大テレビ、皮張りのソファ、ジャングルのような観葉植物たちまでそろってる。
手ぶらでも今日から生活できます、って雰囲気だけど……
ライアンはいないの? と室内を見回す私の背後から、伊藤くんの声がした。
「ここは長期滞在ゲスト専用の部屋だ。コンドミニアムタイプだからキッチンもついてるし、まぁホテル暮らしよりくつろげるだろ。掃除は専属のメイドが毎日やってくれる。オーダーすれば食事も朝昼晩、希望に応じて和洋中――」
「ちょ、ちょっと待ってよ。私、ここで暮らすってこと?」
「そういうことだな」
表情の読みにくい伊藤くんの顔を見上げながら、私は混乱する頭を振った。
「ライアンがそうしろって言ってるの? その、女優さんとの関係で?」
彼はあっさり、「そうだ」と頷く。