ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「映画のPRで来日中だったイライザが、ライと食事した時パパラッチされて、アメリカの方で騒ぎになってるらしい。で、日本のマスコミにも飛び火した、ってこと。ライは、騒動が落ち着くまであんたに、マンションを離れててもらいたいって言ってる」
「……そう、なの」
イライザ・バトンといえば、映画監督と女優の間に生まれたサラブレッドで、確か年は20代後半。オスカー受賞歴もあって、若手の中でも実力派の筆頭だ。
そりゃ、そんな女性のことなら、マスコミが騒ぐのはわかるけど……
彼女は、いわゆる金髪碧眼の美女。
つまり……この前連れてた友達とはまた別の相手、ってことになる。
どうしてそんな、いろんな女性と……?
晴れた空に、みるみる雨雲が垂れこめていくみたいに、気持ちがざわついていく。
「ねえ、伊藤くんは何か聞いてない? 彼が何を考えてるのか」
私の問いに、らしくもなく伊藤くんの視線が揺れた。
「あんた、妊娠、してるんだよな」
「うん、そうだけど……」
「じゃあ、オレには何も言えない」
と、口を噤んでしまう。
言えないって、どういうこと?
もしかして何か、知ってるの?
膨れ上がる疑問に、たまらず口を開きかけ――
「あらあら、申し訳ありません。もうお着きだったなんて。ベルを鳴らしてくださいと申し上げたのに」