ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「どんな会社って言われてもなぁ」
ご飯を大きな口に放り込んで、もぐもぐしながら坂田が考え込む。
「売り上げは……有名どころには及ばないな。でも創業も古くてドクターの信頼も厚い。訴訟沙汰もないし、堅実な会社だ。まぁあのリーズグループの傘下だから、そもそも安定感は抜群だよな」
「社長ってどんな人かな。何か噂聞いたことある?」
「社長? えーと、畑中さんだろ。畑中栄吉。別に特に……悪く言うやつはいないよ。温厚な人らしい……って、お前一体どうしたんだよ? 転職でもする気なのか?」
「あー……いや、まぁその、業界研究? あはは」
探るような視線が、痛い。
「と、とにかく、リーズメディカル関連で何かニュースあったら、教えてもらえると嬉しい」
目を泳がせながら言う私を見て、坂田が呆れたようにため息をついた。
「お前なぁ、余計な事考えてる場合かよ。もっと別に、やることがあるだろ。まずは2人分、ちゃんと食って栄養つけとかねえと」
ほらこれも食え、と自分の小鉢を私のトレイに載せてくれる。
「あ、ありが――」
ぴくっと言葉を飲み込んだ。
今の台詞ってまるで……
え、ちょっと待って。
妊娠したこと、まだ社内で言ってないよね?
密かに焦ってる私に気づいたのか、坂田が「あ」と声を漏らし、決まり悪げにポリポリと頭をかいた。
「悪い……その、聞いた、美弥子から。おめでとう」
あぁ、そういうことか……。