ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
そういえば出産祝いを渡しに行く日を相談した時、妊娠のことも話したんだっけ(美弥子は、坂田の奥さんだ)。口止めしとくの忘れちゃったんだ。
「ありがと。今度の日曜日、赤ちゃんに会いにお邪魔するからよろしくね」
「おう。恐ろしく可愛いぞ。天使だ。覚悟しとけ」
「何それ。覚悟って」
吹き出した私の方をむっと睨み、坂田が携帯を取り出す。
「ほんとだって。写真、見るか? つか、送ってやろうか。超安産だったし、お守りに待ち受けにしとくか?」
「自慢したいだけでしょ」
「あ、バレたか」
ニヤリと肩をすくめた坂田だったけど、ふと声を潜めた。
「美弥子とも話してたんだけどさ……赤ん坊の父親って、あの王子だろ。今噂になってる御曹司。お前ら一体どうなってるんだよ。大丈夫なのか?」
御曹司――……“今、噂になってる”。
震えそうになる唇を結んで、きゅっと持ち上げた。
「どうって? 大丈夫よ。あんな噂なんて、信じてないし」
目の前の心配そうな顔に気づいて、「平気だってば」ともう一度にこっと笑って見せて、お茶碗を手に取った。
「そういえばさ、坂田が紹介してくれた新規のとこ。担当は私じゃないとダメかな。ほら、Eトレーディングだっけ」
「あ、あぁ、そうか。お前産休だもんな。途中で担当変わらない方が……先方に確認してみる」
話題が変わったことにホッとしつつ、ちっとも食欲のないお腹に、少しだけスープを流し込んだ。