ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
その夜、引っ越してから初めて夕食をオーダーした私は。
料理を運んできたマリーさんに、一人だと食べきれないからつきあってくれないか、とおねだりした。
終業時間後なら、という彼女が私服姿で再び現れるのを待ち、一緒にヘルシーなオーガニック料理をいただく。
食事中、マリーさんは心得ているのか遠慮しているのか、ライアンの話題は出さなかった。
代わりに妊娠中に摂るといい栄養や、おすすめレシピなんかをわかりやすくレクチャーしてくれて。(なんと彼女、栄養士や調理師、保育士の資格も持ってるらしい)
食欲は全然なかったから心配してたけど、楽しい雰囲気のせいか、なんとか食べることができた。
そして、食後を見計らって、昼間見つけた記事をプリントアウトしたものを見てもらうと――
「まぁあああ、懐かしい!」
一重瞼の奥の小さな目が輝いた。
「わたくし、ここには写っておりませんけど、ステージの端にいたんですよ。当時は企画部におりましてね、このセレモニーの進行も担当しておりましたから。まぁほんとに懐かしいこと」
「じゃあリー総帥とも、お話ししたんですか?」
期待を込めて聞いたんだけど……マリーさんは「まぁそんな恐れ多い」と笑う。
「声はかけていただきましたけど、挨拶程度ですよ」
やっぱりダメか。
肩を落とす私を見て、マリーさんが首を傾げる。
「総帥のことがお知りになりたいんですか?」
「えぇ、あの……どういう方かなと思って。仕事ができる方だっていうことはわかるんですけど、もっとなんていうか、性格的なことというか……」