只今、愛の診察中につき。
「…響。いま、『ハジメテ』って、言った……?」
「はい。…言いました」
「婚約者、いたんだろ…?」
信じられないと言わんばかりの先生。
「…ははっ。やっぱり可笑しいですよね、婚約者いたのに処女だなんて。彼は、愛の言葉は囁いてくれても、触れてはくれなかったんです」
悲しい、悔しい、どうして。
やり場のない思いが溢れ出す。
「2年も付き合ったのに、1度もです。へへっ…わたしから誘ってみたこともあったんですよ?でも、全然ダメで……。わたし、女の魅力ゼロなんです。いま思えば、最初から然程(さほど)愛されてなかったんじゃないかって…」
「響…」
ボロボロの顔で笑って見せるわたしを先生はそっと起こしてくれてそのまま優しく抱きしめてくれた。