只今、愛の診察中につき。

発車して10分経たないうちに病院に着いた。

この病院は、心療内科と神経内科。そして精神科の3つの科で成り立っている大きな病院だ。

医師達も院長がヘッドハンティングしてきた優秀な方達ばかりで、診察は完全予約制。

現在、新規の患者さんを受け付けてない程人気がある。

…わたしの場合は、親が金にものをいわせて無理に入れてもらったんだけど。



要さんは駐車場に車をとめ、シートベルトを外しエンジンも切ったのに降りる気配を見せない。

「…要さん?」

不思議に思って要さんの顔を覗くと
そこで見たのは苦しそうに歪んだ表情だった。

驚きに眼を見開いた瞬間、強く引き寄せられ抱き締められた。

「かな、めさ……っ」

「…嫉妬、した」

「え?」

「響は僕のものなのに。…僕だけの、響なのに。なのに…っ」

ぎゅうっとわたしを抱き締める力を一層強くして、絞り出した余裕のない声。

…ドキドキ、した。
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