きみと一から始める私
焦げ茶色のローファーに22.5センチの足を押し込んで、また陽太に何か言われる前に家を出る午前7時32分。
すっかり桜も散ってしまって、頬を撫でる風はどこか夏の匂いを含んでいるようだ。
ゴミ出しに出てきた近所のおばさんやおじさんに軽く挨拶をしながら最寄り駅までの道のりを1人歩く私は、斉藤七葉(さいとう ななは)。
どこにでもいるような普通の女子高生…と言いたいところだけど、実際は普通より少し異質、というか。
陽太が文句を言いたくなるのも分からなくはないんだけどね。
私が通っている私立高校は家から少し離れていて、最寄り駅から4駅程度のところにある。
毎朝満員電車に揺られて10分程度、駅からはすぐだ。
今日もいつもと同じ時間の電車に乗り込み、学校へと向かう。