課長、恋しましょう!
昼も間近って頃だ。俺は500円玉を楊枝のお供に、デスクを立った。500円ぽっきり、うまい飯屋が近くにあるんでな。

さっさと行かねぇと売り切れちまうかもしれん。ベルトの上に一センチ乗っかった腹を満足させるため、この時ばかりは颯爽とした足取りになる。

と、エレベーター乗り場の脇から入る階段に、見慣れたジャケットと、焦げ茶色の髪が目に入った。

彼女だ。

まあ、昼飯ぐらい付き合わせてやってもいいか? 俺のほうが給料も高いしな。うむ。頼まれてもお願いされてもないが、どんと任されてやろう。

「ぉ――」

声をかけようとして、固まった。近寄るまでは壁の陰で見えんかったが、なんだなんだ、男がいるじゃないか。しかも確実に俺より若い。しかも結構しゃれた青年だぞ、おい。

いかんいかんと思っても、聞いてしまうのが人の性……どうかいもりのごとく壁にへばりついた俺を笑ってくれるなよ。
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