課長、恋しましょう!
男の声が聞こえた。

「なぁ、俺と、昼飯どうかな?」

「それってデートのお誘いですか」

「や、いやぁ、そうじゃねぇけど」

「はっきりしないなら私、もう行きますね?」

「あっ、待てよ、じゃあはっきり言う! 俺と付き合ってくれ!!」

「お断りします」

ぶっ。お前、そりゃはっきり言い過ぎだろ。男が絶句した気配がこっちにまで漂ってきてるぞ。

「な、そんな即答かよ……なに、ほかに好きなヤツとか、付き合ってるヤツいんの?」

おーおー、今の若いのは惨めだねい。いや、若いから粘れるのか? 粘れるから惨めになれるのか。惨めになれるから若いのか。いや、おじさん一本取られちまったあ。

彼女の声。

「好きな人? いますよ。付き合ってる人? いますよ。すごぅく素敵な人ですよ」

「へ、へぇー……どんなヤツだよ」

「え? 私とアナタってそこまで親しい仲ですっけぇ?」

「っ! な……」

「少なくとも、アナタよりずぅっと頼りになるなるんですよ。アナタも、あと20年くらい経験積んでかっこよくなってください」

「に、にじゅうねんて……」

「じゃっ、早く行かないとお昼食べ損なっちゃいますんで」
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