課長、恋しましょう!
会社に戻る寸前で、俺のケータイが鳴った。

ディスプレイには、学生時代からつるんでるダチの名前。ついでに言うなら、今一緒ンなってプロジェクトを進めてる仲間だ。腐れ縁な。

「おう、どした」

『なん悠長な声してんだお前! やべぇんだよ!?』

「昼飯食ったあとぐれぇ悠長にさせろや。で、なにがやべぇんだ?」

『今日の午後で使う資料のデータを入れたディスクが見当たらん! どうやらどこぞのバカが間違って持ってっちまったかしたんだ!』

「そいつぁ……どんなバカだよ……」

背伸びした彼女が、俺のケータイに耳を押し付けてくる。だから公然だろが。そんなひっつくな。

『とりあえず今すぐ来てくれ! 会議室な! こうなったらデータなしだ、口で押しきるっきゃねぇ!』

「おいおいこのオヤジに話術を求めんなよ。下ネタなら教会の神父がごとく淡々語れるがな?」

『冗談! お前がいりゃそれだけで心強ぇんだ! お前もプロジェクトんひとりだろ! 早く!!』

「へいへい」

ケータイを閉じ、ポケットへしまう。

俺から離れた彼女は、なにやら満足そうな顔してた。
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