課長、恋しましょう!
店屋から出ると、なんでいなんでい、彼女はもう朝と同じテンションになっていた。

「課長、大変です」

「おうどうした?」

「お昼が終わったらまた離れ離れですっ。ああっ、愛別離苦です」

「アイベツリクてなんだ?」

「悲劇ですっ」

「よくわからん。ついでに泣き真似しながら腕にひっつくな。公然だ」

「泣き真似は女の特権です。優しくしてください。公然だからこそ」

「俺にオージサマを求めるな。つうかお前、すっかり機嫌なおったな?」

泣いたカラスがもうなんたらってやつか。

彼女は「えへー」と笑いながら、こてん、と俺の腕にひたいを寄せた。

「私には精神安定剤があるのです。トマトっぽいお腹の誰かさんです。その人は糖分100%なんです」

誰かさんて、俺か。

「お前、生活習慣病はこえ~ぞ?」

「だいじょぶっ、ビター味ですから」

なんじゃそりゃ。
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