幼馴染は恋をする
「僕ね…」

「うん?」

「お父さん好き。お母さんも好きだったけど、今は好きじゃなくなったんだ」

あ。……もう、結婚しちゃったのかな。

「お母さんが知らないおじさんと一緒に住もうって言ったけど、僕、お父さんがいいって言ったんだ。そしたらね、じゃあもう会えないねって言われた。僕、うんって言ったんだ」

じゃあ、恵和君は、柳内さんと一緒に暮らすことになったんだろうか。うんって言ったって…。それって…お母さんには会えなくなるって、恵和君は寂しいだろうに。それでも、うんって…。

「恵和君、その話はお父さんにも話した?」

「うん、話したよ」

柳内さんはなんて言ったんだろう。あぁ、こんなこともまだ何も聞いてない。何もかも全部一度に話すつもりなんだ。これ以上、恵和君と勝手に話してはいけない。

「恵和君、学校は面白い?勉強は何が好き?」

「学校はね、算数と理科が好き。面白いってよく解らないけど」

あ。メチャメチャ理系?フフ、まだ分からないか。

「サッカーも好き」

「えー、凄いね、スポーツもできて。凄い凄い」

「フフフ」


あ。
客間の戸が開く音がした。早かったな。

「恵和?」

柳内さんだけ出て来たんだ…。

「あ、お父さん」

「あの、父と母は…」

「ごめん、何も知らせずいきなり来て。話は聞いてもらった。今はそれだけだ」

そうか、そうよね。直ぐどうこうなる話じゃない…。やっぱり一緒に暮らそうとか、そんなのはいきなりのいきなり過ぎるよね。

「はい。あの、私はどうしたら。私も何も…」

「朝ちゃんは、朝ちゃん次第だ。別に親御さんと仲違いして欲しい訳じゃない。一人暮らしをすることは決めてあるんだろ?」

「はい」

「うん。まずは仕事に慣れて一人暮らしにも慣れなきゃいけない。俺達は行ったり来たりそんな感じでまずつき合っていってみないか?こんな話をここでこんな風に決めるのも付け焼き刃みたいで変だけど。全てをいきなり背負い込むようになっては疲れてしまうだろ?無理せず、少しずつ、どれも少しずつ自然に進めてみよう。勝手に俺が考えたことだけど、どうだろうか」
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