幼馴染は恋をする
「恵和君、ジュース飲んで待ってようか」
「いいの?」
「いいのよ。しばらくお父さんはお話があるから」
「うん」
冷蔵庫からジュースのパックを取り出した。…私も飲もう。取り敢えず落ち着かないと……。手が震えちゃって、…パックの口が中々広げられない。…ふぅ。グラスを支えてゆっくり注いだ。
…ジュースが欲しいって思ったら冷蔵庫に常備されてる、…当たり前みたいに。でもこれは当たり前じゃないのよね。お母さんがいつも気にかけてるから、欲しい物は切らしたことがない。あるのが当たり前になってる…。
「はいどうぞ」
「有り難う」
はぁぁ…こんな急になんて驚いた…。恵和君の声が聞こえて心臓がとび跳ねた。まさかと思って慌てて下りて来たら…何の連絡もなくいきなり来るなんて、思いもしなかった。嘘も隠しもなく、柳内さんとはコソコソ会ったりしていない。それが義理?だと思ったから。
会ったのは卒業式に会って以来だ。お父さんもお母さんも訳が解らないって感じで…パニック起こしてるし…。もう…私もパニック。恵和君がいてくれて良かった。
私は、これからもっと二人で会ったりして話も色々するものだと思っていた。うちに挨拶に来るのはそれからだって思ってた。だから、これは私にとっても何も解らないこと。話はどんな方向に向けてるのか。
「ともちゃん」
「…あ、ん、ごめんごめん、何?」
「お父さんは怒られに来たの?」
「え?お父さんが言ったの?」
「うーん、違うけど、いつもと違うから」
何も聞いてなくても敏感に感じちゃうんだ…。
「恵和君も何も聞いてないのよね?」
「うん。ともちゃんのうちに行くからって言っただけ」
「そうなんだ」
これでは何もかも、順番が後先になっちゃう…。とにかく、何より先に、柳内さんは自分の存在の説明を済ませたい。それと家庭の事情も。それからの事だって…そういうつもりで恵和君を連れて挨拶に。って感じかな。