幼馴染は恋をする
…朝。

「えーそうだっけ?ごめんごめん」

「知って…わざとのくせに…」

「ばれたか。あーじゃぁ、私は上に居るから」

「うん」

俺にくれるはずのワッフルは朝の姉ちゃんがちゃっかり持って行ってしまった。

…。

「…それ…私のだから」

…。

「…ぁあ、ああ、これか」

「もう…適当に出すんだから」

「ほら。別に要らないし」

散々振った容器を朝に差し出した。

「別にもう…あげる」

…。

「あー、ノートとか写すか?明日ないやつとか置いていこうか」

「あ、うん。有り難う」

…。何も、考えてなかった。ここに来て話す言葉も。…態度も。勢いで来たようなもんだ。

「…あのな」

「何?」

…。

「元気そうだな、と思って」

…。

「大丈夫だよ」

「え?」

「別に、今日は、具合悪いとかそんなんじゃないから。なんか…気が向かなかっただけだから。布団から出たくなくなったの…ずる休み。全然違うからね。…誤解、してるんだよ、みんな」

「あ」

朝、勘づかれてたのか。

「そっちの事でしょ?大丈夫かって聞いてるの。…変な男の人…とか、怖い目に遭ったとか、そんなんじゃないから。ほんとに。違うから。嘘ばっかりだから。来た理由はその事でしょ?」

…。

「俺が…いいって言っても朝をちゃんと家まで送って…」

「だから、違うんだってば。そういうのじゃないって言ってる。違うの。……はぁ」

あ、本気でうんざりしてるように見える…じゃあ…。

「パッと見かけただけの人が、何にも知らないのに…勝手に想像で言ってるだけ。大人は…直ぐ変な方に決めつけるから…普通に同級生とか学校の子同士とかでも男女だといいように見ないじゃん…」

「あ、俺らは…」

「大丈夫。何の誤解もない。親が知ってるから」

「そうなのか。あ、じゃあ、変な男とかじゃなかったのか」

「うん。違う。違うよ」

「そうか。はぁ、良かった。なら良かったよ」

あ…じゃあ、何だったんだ…。誰だ、その男の人…。男の人と居たのは本当だよな。

「朝…」

「これ、やっぱり飲んでいい?」

「あ、うん」

「明日は行くから」

「そうか」

「…変なの」

「え?」

「何だか知らないけど、心配したんだ?」

「あ、あー、まあ、話がそんな話だったから…ごめん。心配になったんだ」

会ってみないと様子は解らないから。

「信じたんだ」

「信じたっていうか…」

「でも、有り難う。休んだりしたから、余計、だよね?」

…。

「休むんだったらそのことで、…何かあったんだって…ごめん」

…思うだろ。

「本当に何もないから」

「うん」

じゃあ何で休んだんだ。ずるっていっても…噂とかで気分が落ちたんだろ。何もないっていうなら、何だったのか、そこは言わないのか。どういう人なんだ。

大丈夫だって、心配ないからって、そればっかりしか言わないから、俺は適当にノートを置いて帰った。大丈夫だっていうならそれでいいにするしかない。

だけど、朝の噂。その日のものだけじゃなく、別の日も見たって噂が立ってた。
中は解らない。俺には何でもないしか言わなかったから。だけど、男の人と居たという目撃談は嘘じゃなかった。そこに関しては、どうやら事実だった。
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