幼馴染は恋をする
「声がでかいんだって…」

「貴浩~?、お風呂、早く入りなさ~い」

「解ってる~」

俺は姉貴の部屋から出ようとした。

「待って。それだけで終わりって訳にはいかないから。…変よ。…言えばいいじゃない」

「あ?」

「朝ちゃんよ」

「あ?」

「なんであんたをだしに使ったのかって話よ。事情があるんだろうけど、お姉ちゃん、ちょっと許せないな」

「…知らないよ」

もう訊問だ。ジッと覗き込まれた。思わず目をそらした。

「こっち見なさい。知らないわけない。知らなくて受けたりしないでしょ?」

「あいつが…誰にも言ってないこと、言えない」

「あんたは知ってるってことよね、その相手。しかも普通に言えないような人。あんたじゃなくても相手が同じ中学生とか、まあ他校の生徒とかならそう言えるでしょ?でしょ?それに居ても居ないって言ってもいいんだし。そこは好きな人は居るって言いたかったのよ。それがポイント」

「もう、自己満の想像はそのくらいにしとけよ、俺、風呂行くから」

「まだ、ちょっと待った。里英も知らないってことね?」

首根っこを掴まれた。

「放せって……はぁ、俺はそこまでは知らない。知らないけど、多分話してないと思う」

あいつはペラペラ喋らないから。

「…益々難しい相手ってことになるわね」

「もう、いい加減にしろよ。絶対余計なこと言うなよ」

「解ってるよ。で、あんたは満足なの?」

「何が」

「偽物の好きな人にされて。それで満足?」

「……別に」

「迷惑じゃないんだ」

「何だよ…」

「呑気ね、ば~かって言ってるの」

「知るかよ」

「貴浩~、温くなっちゃうから…」

「解ってるよ~。
俺らのことはもう放っといてくれ」

「はいはい」
< 55 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop