幼馴染は恋をする
「待って、待ってください」
「朝ちゃん…」
全力で走った。追いついた。
「あ、あの、携帯、持ってますか?」
「あ、ああ、持ってるよ?」
ポケットから出した。
「お願いします、貸してください、…はぁ」
「いいよ?どうしたの?買うものでも忘れたの?……はい」
渡された。
「ありがとうございます、直ぐ、急ぎます」
えっと、確か……。番号を入れた。
「大丈夫だよ?」
声に出して話す訳にはいかない。
【私、朝。今から会ってる事にして、お願い、一時間くらい】
ショートメールを送った。
(着メロ)
あ、来た。
【解った、一時間でいいのか?じゃあ、俺は今からどっか行ってた方がいいよな、貴浩】
はぁ、良かった、見てくれた。
【うん、詳しいことは後で】
【解った】
送信履歴を消した。
「……はぁ、有り難うございました」
「もういいの?解決?」
「はい」
歩き出していた。
「しかし、ハハ、ジェネレーションギャップだね」
「え?」
「あー、オジサンだなと思ってね。ほら、随分急いでるようだったから、そんな時は電話しないのかなってね。用件も返事も速答なのにと思って。今の子は電話はあまり使わないっていうよね」
あー、そうだよね…そうなんだけど。なんか変に思われたかな。
「あの、私、電話は使いますよ?友達と話します」
「ん?そうなんだ」
…。
「あの、急いでいるところをすみませんでした」
「あぁ大丈夫、こうして早歩きで帰ってるから?ハハハ」
そうなんだ。こんな時に。…こんな時だから。
「あの、なにか、お手伝いできることありませんか?恵和君のお世話をしてると、洗濯とか、ご飯とか、大変じゃないですか?」
「あ、…それでだったの?」
「え?」
「今の。おうちに連絡をしたんだね。会話は聞かれたくないからメールにした」
「あ」
違う、うちじゃない…。
「どう言って許可をもらったのか、もらってないのかは解らないけど、駄目だよ?恵和が居るとはいえ、知らないオジサンの部屋に行こうなんて」
「……知らないオジサンじゃないです。…柳内さんです」
「ん、まあ、名前はね。そんなことじゃないって解るよね?」
解ってます。
「もう、何度も会ってます。面識のある人です。…知らない人ではないです」
「朝ちゃん…」