幼馴染は恋をする
中学生のするバレンタインやホワイトデーのようなものだ。

「大人の人なら、もっとちゃんとした物を作って渡すから…」

こんな風に何もまともに作れないことを実感したくない…。もっと、ご飯として食べられる物…そういう物の方がいいのは解ってる。
だからこっそり置いてきたかった。

「ちゃんとしてるよ?これはこれでちゃんとしてるじゃないか」

「でも…。してることは子供です…」

お菓子なんて…。

「…いけなかったね。頼んでしまったから」

「え?何をですか?」

何も頼まれてない…?

「恵和と一緒に留守番をとお願いしたから、結果、この部屋を教えてしまった形になったんだね」

あ。……それは。

「…ごめんなさい、勝手に来てしまって」

「んん。そうだね」

ぁ…迷惑だ…困らせた……嫌われちゃう…。嫌だ。

「ごめんなさい!」

「あ。朝ちゃん」

頭を下げてひったくるようにして紙袋を掴み、走った。逃げるように走った。迷惑なことしちゃった。こんな事、しちゃ駄目だったんだ。

そのまま学校に行って貴浩君に渡した。
なんだ、くれないようなこと言ってたのにくれるんだって言われた。やけに多くないかって言ったから、誠人君の分もだからと言い返した。
二人はお昼休みに食べていたようだった。

帰りにほらって、紙袋を返された。…美味しくなくてちょっとだけ食べて返されたんだと思った。見ると中にはグミとかチョコとか小袋のお菓子が沢山入っていた。誠人と買ってきた、俺と誠人からのお返しだ、クッキー、旨かったぞって、言ってくれた。
なんだか苦しくなって……今朝のことを正直に話した。だから綺麗にラッピングされてたんだな、…馬鹿だなって言われた。貰うって言ってくれた物をなんで取り上げてくるんだよって。
そうは言ってくれたけど、部屋に行ってしまったことも迷惑そうだったから、って。
それは心配したからだろ、朝が部屋に来たってことを気にかけたんだよって、言ってくれた。何したって…、何もできないから、子供だから駄目なんだよって…貴浩君に言ってる間に泣きそうになった。
そんなの最初から子供だって解ってるだろ、だから、来ちゃ駄目だって、チビが居ても大人の男の人の部屋だから心配されてるんだろって、言われた。

そうなんだ、解ってる。好きだって思ってても子供だから相手にされないし、できない。解ってる。
その上、もう嫌われたかも知れないんだ。

このくらいのことで落ち込んでめげてるようじゃ無理だなって。嫌われたかもなんてビビッて諦めるのかよって言われた。
< 80 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop