幼馴染は恋をする
「お母さん、私、手伝う」

「え?いいのよ?時間があるなら勉強しなさい、いいから」

急に料理を教えてなんて言ったら、どうしたのって言われると思った。

「いいの、いつも食べたい物だけ言って、最後までちゃんと手伝ったことがないんだもん。だから手伝う」

最初から最後まで一人で作れるようになりたいから。

「そ、う?だったら作ってみる?」

「うん」

やっぱり何となく不思議がられちゃうよね。

「調味料を入れるでしょ?お母さん、一々量らないのよ、目分量って知ってる?」

「うん、知ってる。大体もう解ってるから、一々量ったりしないんでしょ?」

「そう。いつも作ってたら、このくらいねっていう加減ができてくるのよ?料理本はね、きっちり書いてあるけど、好みの味に自然にできるようになったら立派なものね」

「うん…」

お母さんは量ったりしないもんね。

「…な~に?こっそり覚えて…やっぱり大学には行かないって、そんな腹積もりしてるの?…駄目よ…」

「それは別としても、簡単な物ばっかりじゃなくて、ご飯作れるようになりたいから」

「大学、行きなさい。無駄にはならないから、ね?言ってるでしょ?気は遣わないでって」

「お砂糖このくらい?」

「朝…」

「進学か就職か、二年になるまでには決めるから。そういうものでしょ?」

「そうだけどね…、あ、そんなに入れたら甘くなっちゃうから」

「あ、ごめん…」

「大丈夫。煮物はね、そこのうちの味、みたいなものがあるのよ?甘めだったり、お醤油強めだったり。お味噌汁だって、使ってるお味噌で全然違ってくるし、お出汁も。よそのお家のご飯を頂いたらよく解るわ。お母さんの味でいいならお母さんの味付けを覚えなさい?」

「うん、それってお袋の味ってやつよね」

「やつよねって…。慣れ親しんだ味ってことになるわね」

「はぁ、…そうか。私はお母さんの味が好き。勉強になる~」

「まだまだお砂糖入れただけだからね?」

「うん、そうだった」


「何々?珍しいな…今日は朝が作ってるのか?」

「お父さん…」

お父さんだって珍しい。作ってるところ、覗きに来るなんて。

「食べられる物、作ってくれよ?」

「そこは、娘の作った物なら不味くても旨いって言って食べるところでしょ?」

「いや、不味い物は不味いって言わなきゃ上達しないだろ?あんまり旨くないけど頑張ったなとは言うけどな?父さん、魚の煮付け好きなんだ、上手く作ってくれよ?」

「大丈夫、任せておいて、お母さんが居るから」

「大丈夫ですよ、味見はするんだから。今日は少し甘めになりますけどね~」

「甘いのはちょっとな…」

「あ、ごめん、さっきので…」

「大丈夫。ちょっと言ってみただけよ。バランスは取るから。そう言っておけば、お父さん余計美味しく感じてくれるでしょ?フフフ」

それからは、ほぼ毎日、主に和食を教えてもらった。
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