幼馴染は恋をする
「ごめんなさい、なんだか、話が合わなくて」
「どういうことだ?」
「あのね、彼と、喧嘩じゃないんだけど、上手く会話がいかなくて」
「今、一緒に居るのか」
「うん、もう一緒に暮らしてるような感じだから」
「…そうなのか。とにかく帰りたいって言ってるから迎えに行くよ」
「私が連れて行くから、……ここには来ないで」
…。
「解った。じゃあ、待ってていいんだな?」
「直ぐ出るから」
「解った」
プ。
「…はぁ、連れて来るって言ってるから。迎えには行かない方がいいらしい。直ぐって言っても時間はかかるから。朝ちゃん、送って行くよ」
「…私なら」
「駄目だ!」
ビクッとなるほど驚いた。
「あ、ごめん。大きな声になって。一人でなんて絶対駄目だ。自分をもっと大事に思って欲しい」
「あ、では、お願いします。でも元々は私、一人で来て帰るはずでした」
「駄目だ、こんな時間に一人では絶対駄目だ。
……話が中途半端になってしまったけど。それにまだゴタゴタしそうだ」
「それは大丈夫です…ぁ」
「何もしないって言ったけど、…ごめん、このくらいは許して…ごめん」
抱きしめられた…。
「…信じてくれるかな、こんな俺のこと。必ず挨拶に行くから。今日は家の前までなんてコソコソしてるみたいで卑怯だけど」
「はい、信じてます。…また話せますか?」
「うん、ちゃんと、もっと話そう。いいかな、恵和が帰って来るまでに戻りたいから」
「はい、急ぎましょう」
「ごめんね、…こんな男で」
「ううん大丈夫です、状況が状況です。さあ、出ましょう」
「あぁ、そうだね、有り難う」
朝ちゃんの方が大人だな…。さすが女の子だな。
夜道を急いだ。柳内さんの部屋から私の家までは大した距離じゃない。
家の近くで別れた。私はなに食わぬ顔で、叱られるつもりで家に入った。
「ただいま」
「もう…朝…、大丈夫だったの?こんな時間にコンビニなんて…帰って来るのもちょっと遅いし…。携帯、持って出なかったの?鳴らしたのに出ないから、お母さん…」
「ごめん忘れてた。大丈夫。なんでもなかったでしょ?はぁ寒かった。せっかく行ったのに、カイロ売り切れだった。結局、三店舗くらい行ってみたのになかった。急に寒くなったからだよね。考えることはみんな同じなんだね」
「…もう、言ってくれてたら、お母さんが買って置いたのに。駄目よこんな時間に飛び出して、そんな三軒もなんて。危ないから…大丈夫だったからって…」
「うん、もう遅くなってからは行かないから。寒いから中でコーヒー飲んできちゃった。あ、お風呂入るからね」
「あ、…もう。よく温まるのよ?」
「う~ん。解ってる~」
…朝、確かにコーヒーの匂いがした。だけど、コーヒーとは別の、微かだけど……いい匂いがした…香水?ちょっとスパイシーな…気のせいかしらね。