ストーリー
嫌な客も増えるかもしれない。


「あのね。世の中には何もないのに人を叩く人って、沢山いるのよ?」


裕子おばちゃんは手を伸ばし、両手であたしの手を握りしめてそう言った。


その手は母親と同じくらい暖かい。


「コンビニに入ると同時に怒鳴って来るお客さんだって、普通にいるのよ」


「そうなの?」


あたしは驚いてそう聞き返した。


「そうよ。クレームなんて日常茶飯事。だからね、嫌な人が来たからって自分のせいだって考える必要はないの」


そう言われて、あたしは母親へ視線を向けた。


「愛奈が自分で決めなさい。執行猶予期間でも、バイトはできるんだから」


ずっと家に引きこもっているワケにはいかない。


かと言って、1度犯罪者として有名になってしまうと世間の中に戻って行くことは難しい。


あたしはゴクリと唾を飲み込んで接客マニュアルへ視線を向けた。
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