“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
もう許してくれと思ったが、この暗い中できちんと歩ける自身もなかった。ミシェル様の手を借りて、なんとか公爵家の本邸に辿り着く。

裏口に、誰かが待っていた。黒衣に剣を佩いた姿である。夜闇に紛れていたので、人がいると気づいた瞬間、びっくりしてしまった。

短く刈った茶色の髪に相手を値踏みするような細い目で、口元は歪んでいる。年頃は二十歳前後か。猫背で、下からミシェル様をジロリと睨んでいた。

「ミシェル・ローゼンハルト・ルメートル。入れ」

裏口は開かれ、ミシェル様は中へと入る。私も続こうと思っていたら、制止された。

「お前のことは聞いていない。入館許可を得てからにしろ」

そんな……。ここまで来て中に入れないなんて。暗い中、ひとりで待つなんて恐ろしい。なんとかして入れてもらわなければ。そんなことを考えていたところに、ミシェル様が助け船を出してくれた。

「彼女は私の助手だ。一緒に連れて行く」

「はあ? 聞いてねえし」

「だったら、本日は引き取らせてもらおう」

「ちょ、待てよ!」

渋々、渋々といった感じで、黒衣の騎士は私も中に入れてくれた。
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