“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「いつまでそこにいるんだ! 邪魔だと言っているだろう!」

そう言いながら、引き抜いた薔薇を拾い、焚火の中へと入れようとする。

「待ってください‼」

作業員のおじさんの腕を掴み、薔薇を奪い取った。ツキンと、痛みが走る。薔薇の棘が、手のひらに刺さったのだろう。

「おい、あんた、それ、薔薇だぞ? 素手で触ったら、怪我をする」

薔薇の棘が刺さった痛みなんて、アリアンヌお嬢様の心の痛みに比べたら大したことではない。

「お願いいたします。薔薇を、燃やさないでください!」

「は?」

「この薔薇は、アリアンヌお嬢様の宝物なんです!」

まだ、燃やされていない薔薇がいくつもある。それを回収して回った。

作業員のおじさんの目線は冷たかったけれど、私にできることは一つでも多くの薔薇を回収することだけ。

今は、手の痛みも、蔑むような目も、気にならなかった。

最後に、気の毒に思ったのか、私を突き飛ばした作業員のおじさんが薔薇を入れるようにと籠を貸してくれた。

「ほら、これに花を入れろよ」

「ありがとうございます」

「……」

「……」

何回かに分けて運ばないといけないと思っていたが、籠のおかげで一回で運べる。立ち上がって、再度お礼を言った。

「助かりました」

「いや……。ああ、なんだ。悪かったな」

「いえ。こちらこそ、お仕事の邪魔をしてしまい、申し訳ありませんでした」

「いいよ。俺達も、作業期間が短い中で仕事をしていたから、いつも以上にいらついていて」

「そう、だったのですね」

公爵家より無理な仕事を押し付けられたようだ。それで、イライラしながら仕事をしていたと。
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