“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
扉を叩いたら、メアリーさんが顔を覗かせる。双子やミシェル様同様、暗く落ち込んでいるようだ。

「どうかなさいましたか?」

「アリアンヌお嬢様の薔薇で、プリザーブドフラワーを作ったのですが」

「プリザーブドフラワー、ですか?」

「はい。約一年間、枯れない薔薇なんです」

「それは、素晴らしい。今すぐアリアンヌお嬢様に、お見せになってください」

まっすぐ寝室のほうへと向かった。ぐすぐすと泣いている声が聞こえる。部屋は暗かったが、魔石灯を浸けさせてもらった。

「アリアンヌお嬢様、エリーです」

「な、何?」

「プリザーブドフラワーを作ったので、見ていただけますか?」

「プリザーブドフラワー?」

枕元に近づいて、完成したばかりの薔薇のプリザーブドフラワーを差し出す。

すると、アリアンヌお嬢様は起き上がり、木箱の中のプリザーブドフラワーを覗き込む。

「これ、もしかして、わたくしの薔薇『アリアンヌ』?」

「そうです。ひとつだけ、きれいな花が残っていたので、保存するために作ったのです。一年間、枯れないよう加工を施しました」

「一年間も枯れないなんて、すごいわ……!」

「水分を抜いた時に色も抜けてしまったので、着色したものになりますが」

「エリーの作った色なのね。可愛らしい色だわ」

「アリアンヌお嬢様をイメージした色なんです」

「そうだったのね。嬉しい」

アリアンヌお嬢様はそう言って、プリザーブドフラワーが入った木箱をぎゅっと胸に抱きしめる。
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