“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
夕食後、アリアンヌお嬢様は蒸留室へやってきた。可愛らしいフリルの付いたエプロンをかけている。

プリザーブドフラワー作りは苛性ソーダほどの危険な薬品は使わないが、何か起こるかわからないのでしっかり護衛が付いてきた。

ミシェル様はあの美貌なので大変存在感があるが、他の護衛騎士は気配を消しているので空気のようだ。アリアンヌお嬢様もまったく騎士の存在を気にせず、リラックスした状態でいる。ありがたいことだ。

「では、始めますね」

「ドキドキするわ」

アリアンヌお嬢様の息が整ったら、作業開始である。

「では、ピンセットで薔薇を摘まみ、ここの薬剤に浸けてください」

「え、ええ」

薔薇の花を薬剤に浸け、魔法をかける。

「では、浸出魔法を展開させるので、少し離れてください」

「わかったわ」

アリアンヌお嬢様は二メートルほど離れ、護衛の背後から様子を窺っている。

「──にじみでろ、浸出(インフューズ)」

これで、薔薇の花色と水分が抜ける。今度は、色を付ける。花びらを深紅に染め、こちらは浸透魔法で色を定着させる。

「──しみこめ、浸透(パーミエーション)」

最後に、乾燥させたら完成だ。

「──かわききれ、完全乾燥(フル・ドライ)」

額の汗を拭う。無事、薔薇のプリザーブドフラワーは完成となった。
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