“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
◇◇◇

ざわざわ、ざわざわざわと、人の騒めく声で目を覚ます。

ここは、いったい……?

手足は動かないが、目隠しは外されているようだ。ただ、周囲は暗い。足を延ばしてみたら、ガシャンと鉄のような硬い物に当たった。頭を傾げてみると、同じように鉄らしき物に当たる。

どうやら私は、箱型の鉄格子の中に閉じ込められているようだ。おそらく、上から黒い布を被せてあるのだろう。

周囲の会話に耳を傾ける。

「ルメートル公爵はずいぶん具合が悪いという噂を聞いたが、本当に大丈夫なのか」

「議会もずっと休んでいるらしいからな」

「しかしまあ、その噂もあと数分後には真相がわかるだろう」

おそらく、ここは公爵家のパーティー会場だ。私はたぶん、参加者に用意された軽食が置かれたテーブルの下に入れられているのだろう。

ということは、私はデルフィネ様に捕まって、一夜を明かしたことになる。

「ああ、レティーシア様だ」

「なんと、艶やかな薔薇のような美しさだ」

「突然王太子妃候補になったと聞いた時は驚いたが、実際に見たら公爵の英断も頷ける」

レティーシア様が来ていると。

「うむむ、うぐぐぐ!」

レティーシア様の名前を叫びながら鉄格子をガンガン叩いたが、会場が騒がしいので私が発する物音は周囲に聞こえていないようだ。
< 229 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop