“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
足早に一階まで階段を上がり、塔から出る。外にいた御者に馬車を用意させるよう命じていた。

馬車がやってきて、無言で乗り込む。

ミシェル様は腕を組んで黙ったままだ。行き同様、私の隣に座った点は変わりないけれど。

このままでは落ち着かない。勇気を出して、質問してみた。

「あの、ミシェル様。私、何か粗相をしましたか?」

「していない」

「ではなぜ、逃げるように帰ったのですか?」

「あることを、思い出したのだ」

「あること、ですか?」

「ああ」

それは何なのか。ミシェル様の言葉を待つ。

じっと、ミシェル様の整った横顔を見ていたが、いつになっても話し始めそうにない。待ちきれずに、急かしてしまった。

「ミシェル様、あることとは何でしょう?」

「石鹸を作る技術を有しているのは、国家錬金術師だけだ。石鹸だけではない。化粧品や煙草なども、国家錬金術師の指導のもとで生産されている」

「そう、なのですね」

ということは、私は錬金術師にしかできないはずの石鹸作りをしてしまったということになる。

「なぜ、エリーの実家に、石鹸の作り方が書かれた本が置いてあった? グラスランド家は、錬金術師の家系ではないはずだ」

「そ、それは……」
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