“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「えーっと、とにかく、信じてくださる、ということでいいのですね?」

「ああ、信じよう」

その上で、整理しなければならないことがある。

「私、アリアンヌお嬢様に石鹸作れますと言っちゃいました。イリスとドリスには、作り方を教えてしまいましたし、メアリーさんにも報告しちゃっています」

「その点は、口止めしておけばいいだろう」

「よかったです。……あの、この先、石鹸は作らないほうがいいですか?」

「個人的な石鹸作りは問題ない」

「そうなんですか?」

「ああ。その昔、錬金術師は今のように国家資格を取得するものではなかったのだ。錬金術師が各々持つ技術は、親から子へと引き継がれ、代々守られていた」

そんな錬金術師の立場が変わったのは、粗悪品を売りつける無印の錬金術師が数多く蔓延ったからだろう。

「国では把握しきれないからと、錬金術師が絡む仕事に国家資格が生まれたのだ」

ただ、その政策も完璧ではなかったようだ。地図に載っていない小さな村などでは、今も親から子へと錬金術が受け継がれている。

「石鹸で商売をしないのであれば、国は目を瞑ってくれる」

「だったら、この石鹸は、問題ないのですね?」

「ああ。ただ絶対に、アリアンヌお嬢様や双子、乳母以外に言わないほうがいいだろう」

「はい」

「ただ、アリアンヌお嬢様を初めとする他人には、亡くなった親戚に作り方を習った、くらいの説明にしておいたほうがいいかもしれない」

「ですね。では、前世の記憶があるというのは、私達だけの秘密で」

「そうだな」

「誰にも言ったらダメですよ」

「約束しよう」

なんとなく、見つめ合ってしまう。ミシェル様の美貌に耐えられず、私が先に顔を逸らしてしまったけれど。
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