“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「それはそうと、その指はなんだ?」

指摘されて、気づく。私は無意識のうちに、指切りげんまんをしようと小指を差し出してたのだ。約束という言葉を聞いて、つい条件反射で出てしまったのかもしれない。

かつての私は、姉の持つ私物をなんでも羨ましがり、使いたがった。けれど、無償(ダダ)では使わせてくれない。そのため、姉の髪を乾かしたり、お買い物に行ったりと下僕と化していた。

狡猾な姉達は、時に「そんなこと言ったっけ?」なんてしらばっくれる時もある。だから毎回、姉と契約を交わす際に、指切りげんまんは毎回行われていたのだ。

「これは、その、前世の癖で、約束の呪文?です」

「詳しく教えてくれ」

聞いてどうする。そんなツッコミを飲み込んだ。隠す理由は何もないので、渋々と説明する。

「小指と小指を引っかけて、指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ますと言い、約束事を守るようにと念押しするものです。魔法ではなく、口約束なのですが」

「なるほど。このように、小指を引っかけるのか?」

「うっ……そ、そうですね」

これは、大人の男女がするものではない。いや、元々は遊女が約束の証として小指を切るとか、怖い謂れを聞いたことがあるような気もするけれど。

とにかく、現代の日本人の感覚では、指切りげんまんは小さな子どもがするものなのだ。

私が硬直したままなので、ミシェル様が無表情で指切りげんまんの呪文を口にする。

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます」

「……はい」

「あとは、どうする?」

「指切った、と言って、小指を離すのです」

ミシェル様はどうしてか、少々残念そうに「指切った」と言って、小指を外してくれた。

しょんぼりするミシェル様。もしかして、指切りげんまんが気に入ったのか。
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