愛のかたち
『咲貴ちゃんはいいね。姉妹で仲良くってさ。』


俊くんはわたしを抱きしめながら淋しそうに言った。

俊くんには3つ上のお姉さんと5つ上のお兄さんがいる。


詳しくは聞いたことがない。

というか話をずらされる。

親のことも話したがらないというか、家のことはタブーな気がしていた。

前に病院に迎えにきてくれた親っぽい人とも一言も話さず外に行ってたしな。

変な感じはしてたけど聞けなかった。


『年末が大変だよ・・・。親帰ってくるし。うるさいんだよね。どっか行くぞー!!とか張り切ってるし。』


うちの親は家族大好き。

年に数回しか帰って来れないので、帰ってきたときは散々喋り捲って一歩も外には出さないかのような束縛を見せる。

そこからコッソリ抜け出すのがわたしたちの腕の見せ所。


『贅沢だよ。』


そう言って俊くんはベッドから出た。

まただ。


あの・・・陰のあるような顔。


陰がある気がするって言ったとき、ないって言ったけど絶対にある。

それが家族のことなんだと最近になってわかった気がした。

< 231 / 386 >

この作品をシェア

pagetop