新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
ひどく憔悴した様子の宮坂は、俺が借りておいた昼休みのひとけのない会議室で「こんな話してごめんね」と何度も言いながら、涙を堪えていた。

あのときは自分が1番大切に想う女性をここまで追い詰めた顔も知らない男の存在に頭が沸騰したものだったが、いざ宮坂と示し合わせて就業後その男と対峙したときは、あまりの小物っぷりに若干拍子抜けしたほどだ。

どうやら西田という男は、自分よりか弱い存在と認識した者に対して横柄な態度を見せる人種の典型的なタイプらしい。

宮坂ひとり相手には、これまで散々強気に出ていたようだが……今回俺が一緒にいるのを見て明らかに怯んでいたのが、手に取るようにわかった。

その後気を取り直したように喚き散らすも、俺があくまで冷静に、これまで宮坂が受けてきた精神的苦痛や恐怖、それを与えた加害者側が負うことになるであろう賠償責任についての話を粛々と述べると、西田は俺を呪い殺しそうな目で睨みながら去っていった。

まああとから思い返してみると、淡々と話しているつもりだったのはあくまで自分が思い込んでいただけで、実際には結構いろいろとドギツイ言葉を投げかけてしまっていたような気がする。

先はわからないがひとまず脅威が去ったあと、宮坂は俺にお詫びがてら食事を一緒にどうかと誘ってきた。

状況を考えれば、本来なら断るべきだったんだろう。
しかしその甘い誘惑に、彼女の異動により物理的な距離が近くなって以降ますます恋情を拗らせていた俺が逆らえるはずもなく。

一応やんわりと遠慮はしたものの、結局俺は彼女の申し出にうなずいて、夕食をともにすることになった。

そして、何の色気もないあの居酒屋で。

俺は最愛の女性に、嘘に塗れた最悪のプロポーズをしてしまうのだ。
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