新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
『ほんと……どうして西田さんは、私なんかに好意を持ってくれたのかなあ』



長いまつ毛を伏せてそんなことをつぶやく彼女へ、ずっと胸の中に抱いている激情をぶちまけてしまいたかった。

『私なんか』じゃない。おまえは魅力的で、特別で、大切にされるべき存在なんだと、知らしめてやりたかった。

だけど、言えない。未だ宮坂の心には、ひとりの男がしぶとく居座っているから。

そしてもう、その唯一無二の存在は代わることがないのだと……数ヶ月前、件の男の結婚式があった日の夜に、彼女の口から聞かされている。

……けれど、もしかしたら。

もしかしたら、俺が、その心を守ってやれるんだとしたら?

ただ彼女が誰にも傷つけられることなく、自分の好きなことを思いきり楽しめる日々を──他でもない俺が、後押しできるんだとしたら?



『……なあ、宮坂。俺と、結婚しないか?』



1度そう考えたら、もう、止まらなくなった。

気づけば勝手に口が動いていて、あまりにもムードのないプロポーズの口上を並べていた。

彼女が退職して地元に帰るかもとこぼしていたことも、たぶんこの提案に至る大きな決め手になったのだと思う。

自分でも、馬鹿なことを言っている自覚はあった。けれども一縷の可能性に賭けて、口にせずにはいられなかったのだ。
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