新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
いろいろと不安はあるけど、とにかく、私が早くすべてを思い出せば何の問題ないんだから。

だから、うん、がんばる!

心の中で改めて気合いを入れ、ひとつうなずいた。

同じように家の中へと上がった皐月くんが、私を追い越して先導する。



「とりあえず、リビングはこっちだから」

「うん」



今日が日曜日で仕事が休みの皐月くんは、私の決して少なくはない荷物を軽々と持ち運んでくれている。

半袖のポロシャツから伸びる筋張った腕にドキドキしてしまって、彼の言葉に返事をしながら思わず視線を逸らした。

玄関から続く短い廊下をまっすぐ進んだ彼が、突き当たりの左側にあるドアを慣れた様子で開けて入っていく。

私も、その背中を追った。



「ウチの間取りは2LDKだ。こっちが洗面所とバスルーム。タオルとかは全部この棚」

「うん」

「で、キッチンは……まあ、今ごちゃごちゃ言うよりは実際使ってもらった方が早いんだろうけど。この引き出しがカトラリーで、包丁とか鍋はこのあたり」

「うん」



荷物をとりあえずリビングに置いておいて、皐月くんが家の中の案内をしてくれた。

彼の説明に相づちを打ちながら、けれども私は、ソワソワと落ちつかない気分でいる。
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