新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
ちゃんと……彼の奥さんとして、やっていかなきゃ。

自分に言い聞かせるよう、ひそかに胸の内で唱えていた私の前で、ドアノブに手をかけようとしていた皐月くんが動きを止めた。

不思議に思う私を、くるりと振り返る。



「ここ、礼の部屋なんだ。あとでゆっくり自分で確認してくれ」

「え? あ、うん」



拍子抜けしながら、なんとかうなずいた。

そんな私からまた視線を逸らし、彼が1番玄関に近いドアを指さす。



「で、こっちが俺の部屋。一応見るか?」

「あ、えっと、うん。じゃあ、ちょっとだけ」



未だ少しの衝撃を引きずったまま、皐月くんの問いかけに答えた。

彼は「わかった」と表情を変えずにうなずき、自室のドアを開ける。



「まあ、別におもしろいものはないと思うけど」



ドアを押さえてそう話す彼の横から、ドキドキしつつ顔を覗かせた。

7畳ほどの、何の変哲もない洋室だ。

シンプルなグレーのカーテンに、黒い本棚。それと似たデザインの黒いデスクには、ノートパソコンが載っている。

そして……壁際には、枕がひとつだけ置かれたセミダブルサイズのベッド。



「……あの、ごめん、自分の部屋も今見てみてもいい?」

「ああ、どうぞ」



一応皐月くんに断ってから、隣にあるドアを押し開けた。

すぐに目に入った見覚えのあるものに、私はドアノブを握ったまま動きを止める。
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