新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
つい1週間前、私的には初めて古都音店長に会い、彼女からここで自分が働くことになった経緯を聞いて驚いた。

なんと私は、客として初めてやってきたその日に、このお店で働かせて欲しいと直談判したらしい。

たしかに、店長の淹れるコーヒーはとてもおいしい。初日の開店前に飲ませてもらったけど、そのおいしさにめちゃくちゃ感動した。

でもまさか未来の自分が、そんな大胆なことをしているとは。同じ人間のはずなのに、にわかには信じられなかった。

だけど、彼女のもとで働いてみて……その疑念は、すぐに消える。

このCafe fluffyは、お店の雰囲気も、店員とお客さんとの距離感も、まさに自分が理想としているカフェそのものだった。

きっと“私”も、そこに心を動かされ、思いきって店長に直談判したのだろう。



『まあ、「弟子にしてください!」なんてキラキラした目で言われて、悪い気はしないからねぇ。それにちょうどひとりでやるのに限界を感じてて誰か雇おうと思ってた頃だったから、タイミングもよかったんだよ』



お店だけじゃない。そう言ってイタズラっぽく笑った店長のことを、今の私もあっという間に好きになった。

入院と自宅療養で鈍ってしまった身体には、立ちっぱなしのうえ物を運ぶことが多いこの仕事はなかなかハードだ。

だけど、すごくやり甲斐があって、楽しくて仕方ない。

毎日家に着く頃にはクタクタになりながら、それでも私は、充実した日々を過ごしていた。
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