新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「たぶん、落ちる直前の記憶。階段を上がりきったところに皐月くんがいて、私の名前を呼んでた……」
半ば呆然とした状態で、つぶやいた。
本当に、断片的な記憶だ。時間にすれば、きっと5秒にも満たない。
けれども初めて経験したその感覚は、衝撃的だった。覚えがないはずなのに、なぜか間違いなく自分の記憶だとわかるソレがスっと身体の中に入ってくる。
奇妙でいて、なのに不思議と嫌悪感はない。
しかし、異様に脳が疲れ、心臓はまるで100メートルを全力で走ったあとのように早鐘を打っていた。
たった今思い出した出来事を体験したそのときに感じていたこと──焦り・不安・悲しみ。
そういった類いの感情も、記憶とともに一気に押し寄せて胸をぎゅうぎゅうに締めつけたのだ。
きっと悪くなってしまっている私の顔色を確認するように、皐月くんがうかがってくる。
「礼、大丈夫か? 思い出したって……」
「ん、でも、一瞬だから……ごめん、あんまり、進歩とはいえない……かも」
答えてから、心を落ちつかせようと大きく深呼吸をする。
たった数秒足らずの記憶で、こんなに負荷がかかるなんて。
失っていたすべてを思い出したとき、私は一体、どんな状態になってしまうんだろうか。
自分で考えたことにこわくなる。
自然とうつむいた私は、空いた片手で胸もとを握りしめた。
半ば呆然とした状態で、つぶやいた。
本当に、断片的な記憶だ。時間にすれば、きっと5秒にも満たない。
けれども初めて経験したその感覚は、衝撃的だった。覚えがないはずなのに、なぜか間違いなく自分の記憶だとわかるソレがスっと身体の中に入ってくる。
奇妙でいて、なのに不思議と嫌悪感はない。
しかし、異様に脳が疲れ、心臓はまるで100メートルを全力で走ったあとのように早鐘を打っていた。
たった今思い出した出来事を体験したそのときに感じていたこと──焦り・不安・悲しみ。
そういった類いの感情も、記憶とともに一気に押し寄せて胸をぎゅうぎゅうに締めつけたのだ。
きっと悪くなってしまっている私の顔色を確認するように、皐月くんがうかがってくる。
「礼、大丈夫か? 思い出したって……」
「ん、でも、一瞬だから……ごめん、あんまり、進歩とはいえない……かも」
答えてから、心を落ちつかせようと大きく深呼吸をする。
たった数秒足らずの記憶で、こんなに負荷がかかるなんて。
失っていたすべてを思い出したとき、私は一体、どんな状態になってしまうんだろうか。
自分で考えたことにこわくなる。
自然とうつむいた私は、空いた片手で胸もとを握りしめた。