新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「……ムキになって悪い。でも、俺が言ったことは全部本心だから。否定はしないで、受け入れてくれないか」
繋がったままの右手が熱い。懇願にも似た彼のセリフに躊躇いながらも小さくうなずくと、皐月くんはホッとしたように眉尻を下げた。
「行こう」、とささやいた彼に手を引かれ、また階段を上っていく。
今度は自分が、斜め後ろから、西日に照らされるその横顔を見上げて──瞬間、まるで白昼夢のように、直前まで自分が見ていたものとは違う光景が唐突に脳裏に浮かんだ。
視界が様子を変えるのは、自分の身体が傾いていっているから。
不意に襲う浮遊感さえリアルで、眩しいくらいの西日を受けながら見上げるその先にあるのは、もう何度となく通ったことのある階段を上りきった場所。
切羽詰まった表情と声音で“私”の名前を呼ぶ、大好きなあの人。
『──礼!!』
「……礼?」
ハッと身体が震えて我に返った。
顔を上げると、心配そうな表情でこちらを振り返る皐月くんがいる。
いつの間にか再び立ち止まっていた私を覗き込む彼と目が合い、そこでようやく、無意識に止めていた息を吐き出した。
ドクドクと心臓が大きく脈打っている。
暑さのせいでなく浮かんだ汗が着ている薄手のブラウスに染み込んで、肌にまとわりついた。
「今……ちょっとだけ、思い出した、かも」
「え?」
目を丸くする皐月くんの前で鈍く痛む頭をそっと押さえながら、先ほど脳裏に浮かんだ光景を思い出す。
繋がったままの右手が熱い。懇願にも似た彼のセリフに躊躇いながらも小さくうなずくと、皐月くんはホッとしたように眉尻を下げた。
「行こう」、とささやいた彼に手を引かれ、また階段を上っていく。
今度は自分が、斜め後ろから、西日に照らされるその横顔を見上げて──瞬間、まるで白昼夢のように、直前まで自分が見ていたものとは違う光景が唐突に脳裏に浮かんだ。
視界が様子を変えるのは、自分の身体が傾いていっているから。
不意に襲う浮遊感さえリアルで、眩しいくらいの西日を受けながら見上げるその先にあるのは、もう何度となく通ったことのある階段を上りきった場所。
切羽詰まった表情と声音で“私”の名前を呼ぶ、大好きなあの人。
『──礼!!』
「……礼?」
ハッと身体が震えて我に返った。
顔を上げると、心配そうな表情でこちらを振り返る皐月くんがいる。
いつの間にか再び立ち止まっていた私を覗き込む彼と目が合い、そこでようやく、無意識に止めていた息を吐き出した。
ドクドクと心臓が大きく脈打っている。
暑さのせいでなく浮かんだ汗が着ている薄手のブラウスに染み込んで、肌にまとわりついた。
「今……ちょっとだけ、思い出した、かも」
「え?」
目を丸くする皐月くんの前で鈍く痛む頭をそっと押さえながら、先ほど脳裏に浮かんだ光景を思い出す。