新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
キッチンに立つ私の耳に、玄関から鍵の開く音が聞こえた。
コンロの火を止め菜箸を作業台に置き、そちらへと急ぐ。
「おかえりなさい!」
廊下に出ると、ちょうど皐月くんが靴を脱いで上がり框に片足をかけるところだ。
自然と笑みを浮かべながら近づく私を見て、彼も同じように口もとを緩める。
「ただいま。今日は、ナポリタンかミートソースパスタ?」
「おしい! ミートボールパスタだよー。よくわかったね?」
不思議に思い、首をかしげて見上げた。
皐月くんがその目を、ふっと一層優しく細める。
「トマトソースっぽい匂いがしてたのと……あとは」
不意に、彼の右手が伸びてきた。
こちらが反応するより早く届いたその親指が、ぐいっと私のくちびるの横を拭う。
「ついてた。まさか、昼メシのじゃないだろ?」
呆然とする私の目の前でイタズラっぽく笑いながら、皐月くんが親指を見せてきた。
そこには、乾ききらない赤いソースがしっかりとついていて。
私はかーっと一気に顔を熱くさせながら、慌てて自分のエプロンの裾を持ち上げて汚れた彼の指先を拭く。