新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
その瞬間。私の脳裏に、またもや今現在自分が見ているものとは少し違う光景や感覚が流れ込んできた。

電飾が照らす夜の闇。
肌にまとわりつく蒸し暑い空気。
ざわざわと耳に届く喧騒。

……同じだ。

同じような、夜店が並ぶ人波の中、困り果てた“私”は立ち尽くしていた。



『どうしよう……みんなとはぐれちゃった』



会社の同期数名とともに訪れた花火大会。

久しぶりに感じる独特の雰囲気に高揚し、道の両脇を陣取るさまざまな夜店に目移りしながら歩いていたら、一緒にいた同期たちといつの間にかはぐれてしまっていた。

しかも、こんなときに限ってスマホの充電が切れているのだ。

駅前で乗ったシャトルバスを降りた停留所から動く前、みんなから「宮坂は絶対迷子になるなよ」って念押しされてたのに……私、ほんとバカだ。

とりあえず、誰かが見つけてくれるまでここを動かないでいた方がいいかな。

人波から外れた夜店の横のスペースへと落ちつき、大きく息を吐き出す。

……よかった。さんざん迷った末に、浴衣を着てこなくて……張り切って浴衣で来たくせにこうしてはぐれて迷惑かけたりしてたら、余計にみじめだった気がする。

まあ、今でも充分みじめだし、みんなに迷惑かけてることには変わりないけど……。
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