新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
自分に言い聞かせていた私は、ふと、そばに人影を感じてそちらに顔を向けた。

そこには少々ガラの悪そうな雰囲気の男性3人が私を囲むように立っていて、反射的に身体がこわばる。



「ねぇきみ、ひとりなの? 俺らと遊ばない?」



ニコニコと一見人懐っこそうな笑顔で、3人のうちのひとりが話しかけてきた。

私と同年代くらいだろうか。上半身を屈め必要以上に近い距離感で顔を覗き込んでくるその人に、自然と恐怖心のようなものが芽生えた。

喉の奥から、小さく掠れた声をなんとかしぼり出す。



「あの……ひとりじゃ、ないので」

「マジ? あ、お友達と一緒かな? じゃあ、その子も一緒にさ~」

「いえ、あの、そうじゃなくて……」

「あ? ごめんね、ちょっとよく聞こえないわ」



そう言った男性が、またさらに顔を近づけてきた。

ビクリと肩がはねる。両脇のふたりもニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら私のことを見下ろしていて、その値踏みするような視線に背筋が震えた。



「は、離れ──」

「申し訳ないが」



なんとか距離を取ろうと口を開いた、そのときだ。

すぐそばから聞き覚えのある声がした直後、広い背中が目の前に現れた。

ハッとした私は顔を上げて、その背中が今1番会いたかった人物のものだったことを知る。



「彼女は俺の妻だ。ナンパなら他を当たってくれ」



聞いたことのない低い声と厳しい眼差しの皐月くんを、斜め後ろから呆然と見上げた。



「は? なんだよ、男連れかよ」



チッとイラついたような舌打ちとともにつぶやき、男性たちは意外にもあっさりと引いていった。

これ以上揉めずに済んだことに安堵して、人混みに消える後ろ姿を見ながら深く息を吐き出す。
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