《これは、僕と君が恋をするほんの少し前のお話》(短編)
彼女は普段、あまり笑わないし喋らない。
友達の話にクスクスと、口元に手を置いて笑っている。
そんな子だった。

自分について話さないし、自分の感情をあまり外に出さない。

そんな子が、今僕の前で涙を流す。

けっこう勇気を出して聞いたんだけどなぁ。

分厚い壁を目の前にバンッと作られたような感覚になった。

だからそれはけっこなダメージで。

でも、ここで引いたらダメだと思った。
ここで引いたら、きっともっと彼女は感情を押し殺すようになるだろう。

だから、僕はグッと勇気を振り絞る。
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