《これは、僕と君が恋をするほんの少し前のお話》(短編)
僕は戸惑う。
質問を返されるとは思っていなかった。


どうして(そんな事を聞くのか?)
どうして(私、泣いてるんだろう?)


どういう意味の「どうして」なのか分からなかった。

彼女は少し赤くうるうるした目でじっと僕を見た。

「何かあったの?」

僕は、彼女の「どうして」に応えずにそう訊いた。

「いえ、なにも。」

そう言ってにこっと笑った拍子にまたポタッと涙が目から溢れ落ちた。
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