好きになるには理由があります
「支社長。
 本日、目を通していただく書類です」
と書類を突き出すと、陽太の目の先、二センチくらいの位置になる。

 ……近すぎる。

「捺印もお願いします」

 陽太が深月を抱えて引き出しを開けようとするが上手くいかない。

 ……邪魔すぎる。

「支社長、今日のスケジュールですが」

 深月が分厚い手帳を取り出すと、陽太の顎にスケジュール帳の角が当たり、陽太が痛そうな顔をする。

「……仕事しにくいじゃないですか」

「あんた、なにリアルに想像してんのよ……」

 物の例えよ、物の例えっ、と怒鳴られた。

「ともかく、あんたなんかが秘書に抜擢されたら、私、許さないからねっ」
と伝票を奪い取り、彼女は出ていった。

 なにをどう許さないのだろうかな……と思いながら、深月はひとり、夕暮れの備品倉庫にたたずんでいた。




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