好きになるには理由があります
 


 深月が去ったあと、杵崎は、また仕事に戻ったが、ちょうど区切りがついたところで立ち上がる。

 軽くノックして、支社長室に入った。

 さすがにもう陽太は舞ってはいなかった。

 真面目に仕事をしている陽太の前に立つと、陽太は顔を上げないまま、
「なんだ?」
と訊いてくる。

「お忙しいのに支社長が引き受けられなくても。

 会社として地域に貢献するところを見せたいのなら、他の者を出してもいいんじゃないですか?」

 そう杵崎は言ったが、陽太は本社から送られてきた資料の確認をしながら言ってきた。

「いや、俺がやる。

 だって、よく考えたら、俺がやらなかったら、他の男があいつに感謝されてしまうじゃないか」
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