好きになるには理由があります
「いや、結構違いますよ?」
と確かに陽太よりは少し背の低い杵崎をマジマジと見ながら言うと、

「まあ、今の状態ならな。
 だが、いざというとき、女はヒールを履くじゃないか」
と言われる。

 いざというときってどんなときだ、と思いながら、深月は言う。

「私、自転車なんで履きません」

「これからはヒールでいいだろう
 船で送り迎えしてもらえるんだから」

 いや~、うちから船に行くのがまず、時間がかかるんで……と苦笑いしながら、深月はあくまでも軽く流そうと思って言った。

「なんだ、そんな理由ですか。
 相性が悪いからかと思いましたよ~」

 だが、真面目な杵崎は、
「相性が悪いのか?」
と真剣に訊いてくる。

「いや、知りませんが、静電気でバチッとなったから」

「阿呆か……」

 そんなしょうもない話をしているうちに、いつの間にか、総務の階に着いていて、杵崎が扉を開けるボタンを押してくれていた。
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