好きになるには理由があります
 離れた陽太に深月は言った。

「口紅、ついちゃいましたよ……」

 だが、陽太の唇を拭おうとした深月の手首を陽太がつかんで止める。

「大丈夫だ。
 面をかぶるから」
と言った陽太の声にかぶせるように声がした。

「なにも大丈夫じゃない。
 とっとと拭いて出てこいっ」

 清春が船室の入り口に立っている。

「……まあ、祀りごとの最中だ。
 殺生はやめておくが……」
と呟き、行ってしまった。

 ひい、と思いながらも外に出て、ちょうど舞っている杵崎を二人で眺める。
< 454 / 511 >

この作品をシェア

pagetop