好きになるには理由があります
 面をつけていない若い男たちが舞っているのだが。

 以前、おじさんたちが言っていたように、杵崎はギリギリで練習を始めたのに、本当に筋がいい。

 他の人たちと並んで舞っていても、まったく見劣りがしなかった。

 神楽は最初にひとりの舞で始まり、徐々に人数が増えていくことが多いが。

 此処の神楽も同じで、ひとりで舞った深月から、三人で舞う杵崎たちの舞へと代わり、次の舞は四人になった。

 杵崎たちのあとに、面をつけ、舞い始めた消防士の重富(しげとみ)を見ながら、陽太が言う。

「いいもんだな」

「え?」

「子どもが本気の父親を見て育つって、いいよなと思って」
と言う陽太の視線の先には、浜で見ている重富の家族が居た。

 今はまだ赤ちゃんだけど。

 重い衣装で誰よりも激しく舞う父親の姿を焼き付けておいて欲しいなと深月も思った。

 いつの間にか陽太とふたり、手をつないでいた。

「ほら、行け、鬼。

 自分の船を踏み壊すぐらい揺らしてこい」
と前に居た清春が振り返り、陽太に言う。




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