都の剣〜千年越しの初恋〜
サシャの何百年にも及ぶ記憶を辿っても、異性と二人きりで会ったことはない。初めてのことに、サシャの胸は初めての感情を見せた。

「サシャ様、お久しぶりです！」

一週間後に会ったツキヤは、人懐こい笑顔をサシャに向ける。その笑顔を見て、サシャは少し胸が痛んだ。もしも自分の真実を話したら、この男は私に笑いかけてくれるのだろうか？そうサシャは思ったのだ。

「ツキヤ、頼みがあるのだが…」

サシャはツキヤから目をそらし、言った。

「町では、私の名前は「サシャ」とは呼ばないでくれ。私は……本来ならここにいてはいけないのだ」

イザナギが望むのは、城にこもってただひたすらあの世の平穏な光景を見続けるということ。町で遊ぶことは望まれていない。

「……わかりました」

ツキヤの声は、とても穏やかだった。ツキヤは「なぜ？」と質問することもない。

こんなことは初めてで、サシャはとても驚く。

「理由を訊かないのか？」

「はい、訊きません」

ツキヤは穏やかに微笑んだまま、続ける。
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